サイバーナイフのような高精度放射線治療機器は非常に精密にできている一方、常に高い照射精度を維持していなければ病巣に限局した集中的な照射ができなくなり、治療効果を弱めてしまったり周囲正常組織に副作用を生じさせたりと、十分ながん治療を行うことが出来ません。当センターの放射線治療品質管理室ではサイバーナイフ治療の高い精度を維持するために、医学物理士と診療放射線技師が協力し合い放射線治療機器や治療計画システム等の品質保証(QA)及び品質管理(QC)に関する業務を行っています。また、精度管理に関する情報を放射線治療担当医師や看護師、事務員とも共有することで、全ての患者様に常に安全で高精度な治療を提供できるよう日々努めております。
常に高い照射精度を維持しておくため、様々な精度管理を行っております。当センターでは2011年に米国医学物理学会(AAPM :American Associastion of Physics in Medicine ) が提唱したサイバーナイフQAガイドライン(TG135 Report)に準じた精度管理を実施しております。毎日行うものから、月毎、年毎に行うものまで非常に多くの実施項目がありますが、その中でも特に重要なものをいくつかご紹介致します。
金属球と放射線測定用フィルムをAQA専用ファントムにセットし、金属球をターゲットとして通常の治療と同じ手順で照射(垂直・水平2方向)を行います。照射されたフィルムには金属球の陰影が写し出され、その重心位置を解析する事によりサイバーナイフの照射位置精度の確認を行います。この検証は、サイバーナイフの始業点検として毎日行います。
人体密度と等価な人頭型ファントムに放射線測定用フィルムをセットし、ファントム内の模擬腫瘍に対して通常のサイバーナイフ治療と同じ手順でCT撮影・治療計画・位置照合・追尾照射を行います。照射されたフィルムを専用ソフトで解析する事により幾何学的な照射位置精度を検証します。この検証は、サイバーナイフが搭載する全ての追尾システムに対して週毎に行います。
作成された患者治療計画により病巣を高精度に照射することができるかを事前確認するため、検証用ファントム(水と等密度の板を重ねたもの)に治療計画データを移植し、実際の治療と同じ手順でテスト照射を行います。その際、高精度線量計や放射線測定用フィルムを検証用ファントムの中に挿入し、基準位置での放射線量や放射線の強度分布を測定します。また、得られた結果と治療計画データとの比較を行い、誤差が許容値に納まる事を確認します。 当センターでは全ての治療計画に対してこの検証を行うことで、仮にわずかな照射精度のずれが生じ治療上のリスクが疑われる場合でも、治療計画の修正や機械的照射位置の微調整等を行い、治療開始までに対応できる体制を敷いています。
放射線治療品質管理室では、精度管理に関する情報を医師や看護師、事務員とも共有することで、全ての患者様に常に安全で高精度な治療を提供できるよう日々努めております。